【専務のひとりごと vol.2 】農業担い手不足〜現場レポート〜

「“今日が最後になるかも”って、毎回いつも思ってんだ」

集落の共同作業の一つに、「草刈り」があります。

年に数回、水路の周りや集落の空き地、市道周りなどの場所を、黙々と草刈りしていきます。この共同草刈りは、水路機能維持や病害虫発生防止、地域景観維持や安全管理など、「農業環境を維持し、良い作物を継続的に作っていく」ために、とても大切な保全管理作業です。

しかしながら、この作業は、早朝5時半から9時頃まで、時に30度を超える猛暑の中、時にジメジメした雨の中、足元も不安定なところで行なう、大変過酷な作業です。私は47歳ですが、これでも実は“若手“と言われるエース格で(笑)、参加者の年齢層は60〜70代が大半だったりします。

先ほど冒頭に記したコメントは、草刈りの休憩中に、最年長である76歳の農家から一人言のように出てきた言葉です。

「今日で最後かも…」と最年長選手がボヤいた後、その他のベテラン選手たちからも「俺もだ!俺もだ!」と、ヤカンからお湯が吹き出すように次々と言葉が出てきます。

一巡して最後に先ほどの最年長選手が一言、「10年後どうなってるんだべなぁ…」とボソッと出た刹那、一気にお湯が冷えたように静寂が訪れました。他の農家は、何も言えず、ただただドンヨリ曇った空を、眺めてだけいたのでした…。

農業の担い手不足は、大変切実な課題です。農林水産省の統計を見ますと、代表者が65歳以上の経営体において、後継者がいないと回答したの数は、実に72.0%に及びます(農林業センサス)。たった28.0%しか「後継者がいる」と答えていないのです。

今後、農業者がいなくなったら農業はどうなってしまうのでしょうか。結論、地域の誰かが引き継いで実施していくことになります。集落営農が法人して拡大したり、地域を超えて農業法人が進出したり、また、否応なしに機械化も進んでいくでしょう。全国を巡ると、数10ha規模の耕作者が急にリタイアして大変!という話も聞くことがありますが、このようなことが、より頻繁に発生してくることは、間違いないでしょう。

農業の担い手不足は、当事者である農家や地域社会だけでは立ちいかない状況になってしまっていると思われます。生産者の枠を超えて、消費者や流通企業、地方自治体もあわせ、日本国全体の課題として捉えていかなければならないと考えます。

(専務取締役 伊藤啓一 2024年9月20日)

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