【専務のひとりごと vol.8】「水資源の大切さ」について考える
「バーチャルウォーター理論(仮想水理論)」という言葉を、皆さんはご存知でしょうか。
実は、私たちの生活に深く関わる重要な考え方なのです。
「バーチャルウォーター理論(仮想水理論)」とは、端的に言えば、「ある製品を作るのに使われた“水”の量に注目する考え」のことです。
例えば、野菜や肉などは、それらを生産するために「水」を使用します。
「え、肉も?」と思われるかもしれませんが、家畜の飼育には穀物類などの「飼料」が必要となり、その生産には多くの「水」を使用しています。つまり肉の生産にも間接的に大量の水が必要になるのです。
つまり、野菜や肉などの製品に使用している「水の量」を計算することで、私たちが日常的にどれほどの水資源(仮想水)を間接的に消費しているかが把握できる、というわけです。
例えば、「ビッグマック1個」で、どのくらいの水資源を使用しているのか、Chat GPTに、仮想水の計算してもらいました(図1ご参照)。

なんと、ビッグマック1個 = 約2,400ℓの水が必要。
もう少し具体的に言えば、お風呂(200ℓ)で約12杯分(!)、ペットボトル(500ml)で約4,800本分(!)。とんでもない水の量を必要としますね!
ビッグマックの事例からも分かるように、私たち日本国は、食料の多くを海外からの輸入品に頼っていますので、仮想ではありますが、「水」をたくさん輸入していることになります。
日本の仮想水輸入量は、世界でも上位(6位)となっており、1人あたり年間約100万リットルにもなるとのこと。(参照:朝日新聞Webサイト)
「でも、日本は雨豊富な水資源国だから、きっと大丈夫だろう!」
しかし、残念ながらこの考えは誤っています。
ご承知のとおり、昨年末から今年にかけて、キャベツを始めとした野菜を中心に、未曾有の供給量不足、価格高騰が発生いたしました。
野菜が産地で作れなかった原因は、夏から秋にかけての高温と、今年非常に多く頻発している山火事でも分かるように、「干ばつ」とも言える「非常に乾燥した気象」が重なったことです。

日本は、雨や雪が豊富に降る地域ではありますが、降水に地域差や季節的な偏りがあります。そのため、ダムなどの水資源インフラを整備し、安定して必要な水を確保してきました。
蛇口をひねれば、当たり前のように水道水が出てくる私たちの暮らしの中では、水のありがたさを忘れがちですが、水資源の貴重さは今も昔も変わりません。
舞台ファームの有する大型植物工場「美里グリーンベース」では、非常に多くの水をレタスの生育に使用しています。夏のハイシーズンには、1日250m3になることもあります。これは25mプール1杯分に相当します。
そのため、美里グリーンベースでは、水資源の有効活用の一環として「雨水」を積極的に活用しています。
施設の屋根に降った雨水を効率よく集めて貯水し、使用の際には、活性炭によるろ過と紫外線による殺菌をおこなった上で、レタスの生育に有効利用しています。
「地球は、水の惑星」とよく言われますが、大半が海水や氷河であり、人間が活用できる水は、地球上に存在する水の中のうち0.01%しか活用できない、と言われています。
未来の農業においては、貴重な水資源を大切に活用することが、ますます重要になっていくことでしょう。
(専務取締役 伊藤啓一 2025年4月24日)