【専務のひとりごと vol.9】食と農の「多様性」について

暑い日が続いておりますが、皆さまお元気でお過ごしでしょうか。

いやー、今年の夏も、本当に暑いですね(汗)。

残暑ならぬ「酷暑」と言った方が相応しい毎日であります。

どうぞ体調には十分お気をつけください。



さて今回は、食と農における「多様性」について、考えてみたいと思います。
 
この未曾有の気候変動が加速するなか、
私たちの食料や農業は深刻な脅威にさらされています。

結論から言えば、この難局を乗り越えるためのキーの一つが、
ほかならぬ「多様性」だと考えます。



そもそも「多様性」とは何でしょうか?
 
多様性とは、

「いろいろな形や性質があること」
「さまざまな要素が含まれていること」


を意味します。



また、生物多様性(biodiversity)においては、

地球上の生物な多様なあり方を指し、
「遺伝子・種・生態系など複数のレベル」での多様性を含む概念


として表現されます。





ご承知のとおり、昨今、「地球上の生物多様性が失われつつある」ことを示す事例は枚挙に暇がありません。



環境破壊や気候変動の進行により、熱帯雨林の急速な伐採、海洋プラスチックによる生態系の汚染、都市化による生息地の分断、さらには地球温暖化に伴う気温上昇や異常気象の頻発などが、その典型的な要因として挙げられます。
 


さらに、こうした危機は野生生物の世界にとどまらず、
私たちの生活と直結する「食」と「農」の分野にも及んでいるのです。


具体的な数字で言えば、FAO(国際連合食糧農業機構)の推計ですが、

「人類が歴史上利用してきた農作物の品種のうち、過去100年でその75%が失われた」

とされています。
 


この事実は、私たちがどれほど急速に、農作物品種の多様性を失ってきたかを物語っています。改めて「そんなに消えてしまったのか」と驚かされると同時に、この損失が未来の食料安全保障にどれほど大きなリスクをもたらすのか、深く考えさせられます。


「人類は数千年前から、7,000種以上の植物を収穫・栽培してきた。
食用可能な陸生植物は最大30,000種にのぼる」

「過去100年で作物の遺伝的多様性の約75%が失われてしまった」


「植物は人類の食事の80%以上を占めているが、

たった30種類の作物が人類の食糧エネルギー需要の95%を賄っている」

「そのうち5種類(コメ、小麦、とうもろこし、キビ、ソルガム)が

全体の60%を供給している」

FAOレポートより)





市場競争や効率化を追求により地域固有の作物や在来品種が次々と姿を消し、農業生態系が急速に単一化しています。
その結果、農業そのものが気候変動や病害虫に対して脆弱になるという現象が、世界各地で顕在化しています。



言い換えれば、

生物多様性の喪失は、私たちの食卓を脅かすだけでなく、未来の食料安全保障にも深刻な影響を及ぼしかねない

のです。

 

もちろん、人類も手をこまねいているわけではありません。
世界各地で、多様性を守るための取り組みが始まっています。
その代表例が、北極圏の永久凍土に建設された「種子バンク(遺伝資源保存庫)」です。

ここでは、世界中の主要作物から在来種まで、百数十万にも及ぶ種子が厳重に保管され、将来への備えとなっているそうです。


まさに現代版の「ノアの方舟」と呼ぶにふさわしい施設ですね。




なぜこれほどまでに種子の保存が重要なのでしょうか。


仮に、将来ある穀物に壊滅的な疫病が発生した場合、その病気に耐性を持つ固有品種が自然界から失われてしまっていれば、人類は大きな食料危機に直面します。

しかし、種子バンクに多様な遺伝資源が残されていれば、そこから耐性を持つ品種を見つけ出し、新たな育種や栽培に活用することができます。
 


つまり、種子バンクは「未来の食料安全保障を支える最後の砦」であり、気候変動や未知の病害に備える人類の知恵の結晶でもあるのです。

今回は、食と農の多様性について考察しました。


世界の人口は2050年には100億人近くに達すると予測されており、これは2020年比で約1.3倍にあたります。
気候変動や環境破壊が進む中、私たちはこれまで以上に食と農の未来について真剣に考えていかなければなりません。



多様性を守ることは、国際機関や研究者だけの使命ではありません。
実は、私たち一人ひとりの選択が大きな力を持っていると言えます。
 
農業者はさまざまな挑戦や努力を積極的に行ない、消費者はそれを意識的に支えることで、その一歩一歩が未来の食料安全保障につながり、持続可能で豊な食の世界を次世代へ手渡す力となりうるのではないでしょうか.



今の時代を生きる私たち全員で、明るい未来を、次世代に繋いでいきましょう!


(専務取締役 伊藤啓一 2025年8月22日)

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