【専務のひとりごと vol.7】ドイツ・ベルリン「FRUIT LOGISTICA 2025」レポート

しばらく前の話で恐縮ですが、2025年2月上旬に世界最大級の園芸関連の国際見本市「FRUIT LOGISTICA 2025」がドイツのベルリンにて開催され、こちらを視察して参りました。

FRUIT LOGISTICAは、東京ビッグサイトで開催される食品展示会の約3.5倍の広さの会場で実施され、その圧倒的なスケールは、国際的なビジネスプラットフォームとしての同イベントの地位を、一層際立たせていました。

2024年の実績としては、世界各地から91カ国2,770社の出店、145カ国66,000人の来場があったそうです。公式には細かな数字が発表されていませんが、今回2025年は、さらに多くの出展・来場者があったとのこと。実際に、会場には多くのブースが立ち並び、多くの人で賑わっていました。

今回のひとりごとは、「FRUIT LOGISTICA2025」で私が感じた点などを、レポートしたいと思います。

 

まず初めに、海外の展示会は、日本の展示会に比べて異なる点がいくつかあり、この点からお伝えしたいと思います。

 日本の展示会では、店頭でビラやパンフレットを配るなど、来場者を呼び込んで商談するやり方が主流ですが、実は、このやり方は海外の展示会では主流ではありません。

どちらかと言えば、海外では、「来場者と営業担当者の対話」が重視されていて、ブース内には、テーブルや椅子が十分に設置されています。自社商品の展示以上にテーブルや椅子が設置されていることも少なくありません。ドリンク(時にアルコール)や簡単な食事やお菓子などが用意されているところも多くありました。

また、パンフレットなどの印刷物は極力抑えられている様で、「必要な情報はウェブで調べてくださいな」というスタンスです。日本の展示会のように、「来場者が袋に山ほど各所からもらった資料を詰め込んで帰る」という光景は見られません。

考えてみますと、SDGsを推進する商品や設備は世に多くありますが、紙の使用も必要最低限に抑えるべきであり、過剰なパンフの配布はSDGsの基本理念にも矛盾しますね。

資料を配布し商品を展示することは、目的ではなくて、あくまで手段。

商談を通じて関係性を構築し、実際に契約まで繋げるのが、最終目的。

FRUIT LOGISTICAに来場される方の、実に74%が管理職とのデータもあり、決裁も含めた本気の商談ができるのも、この見本市の醍醐味なのかもしれませんね。

次に、「自動化」について、です。

農業業界においても、AIをはじめとしたソフトウェアや様々な機械を活用した自動化が、日進月歩で飛躍的に進展しているのは、皆さまもご承知の通りであります。

今回、現地で感じたのは、「自動化に対する切迫感」でした。

その背景には、欧州の政治情勢の変化もあったと考えます。

農業分野においては様々な農作業がありますが、これらを、移民を始めとした労働人材に頼るケースは、多く見受けられます。

アメリカの農場ではメキシコ人移民が、スマート農業が発展しているオランダにおいても、トルコや東欧などの労働人材が、作業現場を担っていたりします。

昨今、欧米各国では移民の急増により様々な摩擦が生じ、結果として右系政党が急速に台頭、移民規制の強化を進めているケースが少なくありません。

労働人口の減少は、その減少分を機械が担う必要があり、そこから先述のAIの活用や機械化に対する期待値が上がっている状況が発生していると考えます。

包装機械の展示と対話スペース
省人化されたレタスの芯取り機

 舞台ファームでは、「農業」の進化版として、農業とエネルギー産業を融合した「農エネ業」を提唱しています。日本においても、農業の担い手不足の問題が加速した場合、スマート農業の活用や機械の自動化は必須となってくると推測します。

未来の農地では、ロボットが人間の食料を作り、ロボットの食料(=電力)も再生可能エネルギーで作っていく。

弊社代表の針生が予見する「未来の農業」は、私たちの想像よりも、意外に早く訪れることになるかもしれない、ですね。

最後、「効率化」について、です。

自動化が進む一方で、効率化(特にエネルギー効率)を追求する動きが加速している、と感じました。

これも、やはり政治的背景が大きい。

長引くウクライナ紛争により、欧州では電力や天然ガスを始めとしたライフラインが大きな影響を受け、急騰するエネルギーコストの煽りを受けた結果、業務を停止した植物工場も数多くあった、とオランダの友人が話していました。

植物の生育を促すLED照明は非常に大きな電力を必要とするのですが、単純につけたり消したりするだけのものが、光のスペクトルの微妙な変更や照度もタッチパネルなどで簡単に変更できたり、時間などに併せて自動で変更できるものへと、進化していました。

美里グリーンベースでの生育を通じ、朝と夕、さらには季節ごとにも、植物の必要とするスペクトルや照度は違うと感じています。これらを絶妙にコントロールできるLEDライトがあれば、非常に効率的な電力利用と野菜生産が可能となります。

また、展示会とは別所にて、最新鋭の植物工場も視察しました。

そこでは日射量・温度・湿度などの基本要素がうまく連動するようにコントロールされており、それにより生育期間を短く栽培することが可能になっていました。

「生育期間が短い」ということは、ラーメン屋さんにおける席の回転率と同様に、生産性が上がることになります。

欧州においては、エネルギーコストが上昇している状況で、少しでも効率的に生産できるような仕組みが出てきていると感じました。

このように海外での視察は、数えきれない知見と考察をもたらしてくれました。

私たち舞台ファームは、今後とも国内外を問わず積極的に情報を収集し、自身や提携農業者へとアレンジしていくことで、日本の農業の発展に寄与していきたいと思います。

<おまけ>

ドイツ・ベルリン「FRUIT LOGISTICA」は、例年3日間開催されます。

オランダの友人が「最終日の午後は、とてもエキサイティングだからね!」と耳打ちしてくれていましたが、「何がエキサイティングなのだろう?」と当日まで分かっておりませんでした。

最終日の午後になりましたら、会場の雰囲気が、何だかザワザワとしてきました。

夕方にはブースを畳む必要があることから、展示物のフルーツや野菜などを展示者同士で交換する交換会?が、スタートしていたのでした。

来訪者である私たちも、たくさんいただきました(日本に持って帰れないので、大量すぎてお断りすることもありましたが笑)

 このような交流から、会社間の新しい関係性や相互連携なども生まれてくるのかな、と大変興味深く感じました。

(専務取締役 伊藤啓一 2025年3月12日)

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